8月6日より開幕、日々熱戦が繰り広げられている2023年の夏の甲子園。開幕戦でいきなり延長タイブレークが適用され、話題になりました!
今回は野球のタイブレーク制度について紹介しますよ。
タイブレークとは?
タイブレークとは、「同数均衡(tie)を破る(break)」に由来する言葉で、主に同点、同順位のチームに決着をつける特別なルールを指します。テニスやバスケットボールなど、様々なスポーツで見られる制度ではありますが、今回は野球に絞って説明しますよ。
野球のタイブレークは主に延長戦に入った時に早期決着のため、ランナーが既に塁に居る状況で回を始めるルールとして知られています。野球 何回まで普通に試合を行い、何回からタイブレークを始めるかは時と場合によって異なりますよ。
どういう状況で始めるかも場合によって異なる
得点が入りやすくなるようにするタイブレークですが、どういう状況で回を始めるかに明確な決まりはありません。我々になじみ深いWBCや甲子園の試合などではノーアウト一、二塁から回が始まるルールとなっていますが、メジャーリーグのタイブレークはノーアウト二塁から回が始まるルールとなっていますよ。ちなみに、NPB、つまり日本のプロ野球の公式戦ではタイブレークが実施された事例は一度もありません。2021年の日本シリーズにはタイブレークが実施される可能性もありましたが、結果的にタイブレークは行われませんでした。
タイブレークが行われた印象的な事例
では、ここからはタイブレークが行なわれた野球の試合を取り上げながら、タイブレークについて解説していきますよ。
2020オリンピック、日本対アメリカ
最初に取り上げるのは、2021年に行われた2020オリンピックの野球競技、日本対アメリカ戦です。同大会で日本は、決勝でも金メダルをかけアメリカと争いましたが、タイブレークが実施されたのはノックアウトステージ、つまり予選の方となります。
日本が1点ビハインドを土壇場で追いつき、6対6で9回を終えた両チーム。この大会では10回からタイブレークが始まりました。
バントが分けた明暗
タイブレークのルールでいきなりノーアウト一、二塁。そのチャンスの中、アメリカはバントを行なわず、強行する作戦にでました。しかし日本の栗林良吏投手が無失点に抑えることに成功。その裏、日本は先頭に代打、栗原陵矢選手を起用してまで送りバントを敢行、これが見事成功すると、1アウト二、三塁、犠牲フライでサヨナラの場面で打席に入った甲斐拓也選手が犠牲フライどころか、フェンスにまで届く大飛球を放ち、見事日本はサヨナラ勝ちを収めたのでした。
タイブレークは後攻有利?
バントを行なった日本が勝利、バントを行なわなかったアメリカが敗北という結果。とはいえ、先攻だったアメリカがバントの作戦を取るのも簡単な選択ではなかったはずです。後に守備を控える先攻チームは、先に一点でも多く点を取っておきたいという心理が働きます。いきなりバントをすれば、一点を取れる可能性は高くなりますが二点以上取れる可能性は下がってしまいますからね。一方、後攻は何点取ればいいかがわかっています。1点でも取ればいいという状況であれば、躊躇なくバントのサインを出すこともできるでしょう。元より延長戦は後攻が有利と言われがちですが、点が入りやすいタイブレークなら猶更と言えるかもしれません。
2023年夏の甲子園、上田西対土浦日大
続いて、2023年の夏の甲子園の開幕戦となった長野県代表、上田西校と茨城県代表、土浦日大校の試合を紹介します。4回を終え2対2、そこからお互いに一点も許さないという非常に締まったゲームとなったこの一戦。なんといきなり延長戦に突入したのですが、高校野球でも2023年春のセンバツから延長10回以降をタイブレークで行うルールに変更となったため、開幕戦からいきなりタイブレークが実施されることとなりました。
試合展開が一変
先攻の土浦日大はノーアウト一、二塁から送りバントを試みるも失敗、しかしその後四球があってワンアウト満塁となると、タイムリーヒットが飛び出し念願の勝ち越し点を得ました。その後ツーアウト満塁となったものの、そこから怒涛の5連打、一挙6得点で8対2としましたよ。後攻の上田西は相手の暴投で一点を返したものの、ヒットは一本もなく、結果8対3というスコアで土浦日大の勝利となりました。
大量得点でそのまま試合を決めてしまえるケースも
いかにタイブレークと言えど、先に大量点を入れられてしまえば後攻チームには重い雰囲気がのしかかります。後攻でも得点のチャンスはあるとはいえ、同点状態から勝ち越しを許してしまうと選手達のメンタルにもダメージが入ることでしょう。上田西校は、タイブレークという制度にそのままのまれてしまった形になると言えるかもしれません。
タイブレークのメリット、デメリットは?
タイブレークのメリットは、なんといっても試合の長時間化を防ぐこと。近年は、プロであれば観戦の敷居を下げるため、アマチュアであれば暑さ対策のためなど様々な理由で野球の時短の必要性が叫ばれており、タイブレークは延長戦による試合の長時間化を抑制するのに正にうってつけの制度となります。それこそ甲子園などでは日程の問題で簡単に再試合とはいかないため、短い時間で白黒つけられるタイブレークは重宝するのですね。
野球のタイブレークは最早別物?
タイブレークのデメリットは、ルールに大きく干渉する性質そのものです。いきなりランナーを背負った状態で回が始まるというのが、最早それまでの野球とは「別物」に感じられる人もいるようです。気にならない人にとってデメリットはないかもしれませんが、受け入れられない人もいるのですね。先述の2023年夏の甲子園開幕戦でも、「締まった良ゲームがタイブレークによって壊された」「せめて11回からにならないか」と微妙な反応を示す野球ファンも多くいました。
最後に
今回は野球のタイブレークについての紹介でした。
長く縺れそうな試合に決着をつけてくれるタイブレーク制度ですが、野球ファンからすると複雑だという声もあるのですね。もし将来、プロ野球にも導入となると、また議論が起こりそうです。